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東京は、2016年のオリンピックの開催都市に7都市が名乗りを上げるなか、08年6月4日のIOC理事会で正式候補地として残った4都市の中でも1位評価を得た。最終決定は、来年のIOC総会で決定される。それでは、東京がオリンピックを招致しようとすることは、どのような経済効果があるのだろうか。
今、まさに北京オリンピックへ日本の選手達が続々と向かっている。わが国士舘大学からも、柔道男子100キロ超級・石井慧選手(体育学部4年)、同100キロ級・鈴木桂治選手(H18年院卒)、シンクロナイズドスイミングの川嶋奈緒子選手(H18年院卒)の4人がメダルをかけて挑む。

オリンピックは、「参加することに意義がある」と語ったのは、近代オリンピックの創設者であるフランスのクーベルタン男爵であり、「身体機能の向上」と「平和」を求めて開催されるスポーツイベントである。ちなみに古代オリンピックは、ギリシャで紀元前776年から紀元393年まで開催されたもので、1896年のアテネ以降のオリンピックを近代オリンピックという。
写真:ギリシャ・オリンピアで行われた五輪の聖火採火式
写真提供:日本オリンピック・アカデミー野崎忠信氏
クーベルタンがオリンピックを提唱した理由は、仏露戦争(1870–1871)でのフランス敗戦にあった。「身体教育」の差が敗因であったが、若い世代が戦争で戦って嘆き悲しむよりは、ルールの中で競い合い、その交流を通じて世界の国々が友好な関係になることが重要だと考えた。そのため、オリンピックは「アマチュアリズムを基本とした平和の祭典」と言われるようになった。
1964年に開催された東京オリンピックは、日本の高度成長の原点でもあった。この当時、日本はオリンピックの開催に向けて新幹線、首都高速道路、オリンピックスタジアム等の社会インフラの整備のみならず、国民生活の高度化に寄与したカラーテレビの普及など、戦後の経済復興においてオリンピック開催は社会成長の大きなバネとなった。
一方、それまでのオリンピックのあり方を一変させたのは、ロサンゼルスオリンピックであり、最大のショウマンシップの商業イベントであった。その開催経費は、放映権、スポンサー企業の募集などほとんどを民間から調達するもので、その後のオリンピックの開催方法や経費調達方法を一変させるほど大きな影響を与えるものであった。

2016年に開催予定の次期オリンピックに向けて、東京は「コンパクトで効率的な大会運営」を図るとその趣旨を明言している。これは、64年で使った施設などを利用し、既存の交通網を出来るだけ有効活用し、開発を出来るだけ避けるというところに特徴がある。換言すれば「エコでコンパクトなオリンピック」を目指すと言える。
一方で、東京オリンピックの招致は、新たな地域格差論争を引き起こす危険性がある。08年6月のIOC理事会の決定でも、「インフラ」「安全・治安」「環境への影響」では高い評価を得たが、「政府の支援・世論」の項目では7都市中4位と問題点が浮き彫りにされた。
バブルの崩壊以後の失われた15年の間に、地方はかなり疲弊してしまい、国自体も1000兆円を超す多くの借金財政となってしまっている。さらに、東京と地方との格差も大きな問題となっている。一方で、東京は日本経済を牽引する世界都市でもあるため、世界の金融や企業を引きつける都市機能を充実させなければならない。アジア地域でいうなら、北京、香港、ソウル、シンガポールなどが競争相手となる。東京の成長発展には、国際と国内の両面への対応策を十分にとる必要がある。東京は、90年代の景気低迷で「失われた10年」と「東京の影響力の低下」をオリンピックを起爆剤として、世界経済的な求心性と21世紀の課題でもある環境対策の優秀さを世界に打ち出すことがねらいだと考えられる。
石原知事は07年12月、東京に集中する法人事業税を、地域格差是正の財源にするために政府に3000億円程度を他の自治体に移転する提案に同意した。それ同時に、福田首相から「都の重要な施策に国は最大限協力する」との言質(げんち)を引き出している。ここにも東京オリンピックにかける2重の意味が見え隠れする。
一般的に経済波及効果は、次の図のように直接効果(建設などによる経済投資)+1次波及効果(原材料などの需要による経済効果)+2次波及効果(雇用者の所得増などによる消費増)として計算される。

■一般的な経済波及効果(A+B+C)
つまり、直接効果にはオリンピック種目の開催施設となる新設のスタジアム、アリーナ、水上競技場、オリンピックマリーナ、選手村などと、報道機関のためのメディアセンターなど建設予定の事業が含まれる。また、民間企業においてはホテルなどの宿泊施設の新設や改築など、直接的な投資も含まれてくる。一方観光客は、宿泊し、交通機関を使って移動し、食事や土産品などを購入する、といった一連の行動すべてが経済行為となり、経済波及効果をもたらす。
第一次波及効果では、建設等に必要とされる原材料の需要として関連企業の業績を伸ばすことになる。また、スポーツイベントは、多くのマンパワーも必要とするため臨時的な雇用の拡大にもつながる。
こうした直接投資の拡大、関連企業の業績拡大、マンパワーの需要拡大が、雇用者の所得増につながり、さらに消費の拡大へつながる。これが第二次波及効果である。このような経済波及効果の算出には、一般的に経済産業省や都道府県で公表している産業連関表を用いて計算する。
招致本部が試算した経済波及効果は、下表のように一般的な経済波及効果の形式をとっていない。それは、東京のオリンピック招致には、様々な招致競争や政治的影響があるので、明確な公表を避けているからである。
本部が公表した数値に、調べた内訳を入れると下表のようになる。直接効果に相当する需要増加額は1兆2677億円、波及効果に相当する生産誘発額は都内だけで1兆5676億円、全国的な合計誘発額は2兆8342億円となり、全体的な経済効果は4兆1019億円となる。しかし、これはオリンピック開催に伴う道路整備などのインフラ分が含まれていないため、オリンピックに伴うインフラ整備を入れれば倍以上の波及効果が期待できる。

ちなみに、北京オリンピックの経済効果は39兆円(中国のオリンピック準備委員会公表)と試算し、地下鉄の整備や空港拡張工事、交通インフラの建設などが含まれている。日本の場合は、エコに配慮している姿勢を明確にするために、できるだけ既存の競技会場を使い、新たな建設や開発を最小限にするオリンピックであることを標榜している。そのため、北京オリンピックほどにはならないが、それでも上の表に加えられていないインフラ整備分を含めて考えれば、経済波及効果は公表値の数倍になってもおかしくはない。
この経済効果はプレオリンピック効果とオリンピックのイベント効果を考えているが、オリンピックの本当の経済効果はポストオリンピック効果にあるとも言われる。
IOCの次期オリンピックの候補地の選定は、2009年10月の総会で世界各国の投票によって決まる。東京は現在4候補地のなかで1位評価ではあるが、過去に1位評価でありながら敗れ去った候補地も多い。ここで重要なのは、今後のオリンピックのあり方を変えていくような理念や方法論の提示であり、それが各国の賛同を得られるものであるならば2016年に「新たな東京オリンピック」が実現することとなろう。
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