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概要

国士舘史研究年報第9号

国士舘の設立とその時代85「戦争や急速な重化学工業化の展開の中で「生命」の危機感が蔓延」する時代状況のなか、「物質文明批判と利益追求の自由=生存競争の「近代」を超え、普遍性を求めようとする精神の営みを根幹で支えた思想) 11 (」とも整理される。この生命主義は、文学や芸術、哲学、宗教といったおよそ文化的と呼べる領域に広く共有された思潮だが、その思潮と教育も無関係ではない。むしろ先に触れた大正新教育では、生命の語が様々に論じられるのである) 11 (。その点についてここで取り上げる余裕はないが、教育学や教育史の側からは、生命主義と新教育の関係については時代的な共時性は認めつつも、積極的に論じられているとは言い難い) 11 (。鈴木の整理する生命主義に対して、「文学、芸術、哲学、宗教など各分野における思潮の差異や特質による分類については曖昧である) 11 (」との指摘は確かにそうだが、その点については鈴木自身も「「生命」の観念が、まさにスーパー・コンセプトとして、一切の現象を呑み込むブラック・ホールのようなものとして働くことだけは心得ておこう) 11 (」と認めつつ、さらに次のように研究の方向性を示唆していた。繰り返すが、「生命」に関する思想は、いつでも、どこにでも存在する。「生命」は人間のだれでもが実感しうるものだし、誰もが、何らかの生命観をもっている。その意味で「生命」という観念は普遍性をもっており、歴史や地域性を超えて思想を観察するための概念たりうる。「生命」を観察装置として用いるならば、言い換えると、それがどのような「生命」観に支えられているかという問いを基準に分析するならば、あらゆる思想について、それぞれの相互関連と特徴を明らかにすることができるはずだ) 11 (。次節ではこの鈴木の言葉にも拠りつつ、生命という語と連綿とするかたちで主張される国士舘の「活学」について検討する。三 「活学」と国士舘1 「活学」と生命主義国士舘の設立趣旨に「活学を講ず」の宣言があることは前節で触れたが、そこでは物質文明の弊害や当時の学校教育における形式主義的な傾向への批判が展開されていた。その文脈は、同時代に生起した新教育と通底する