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概要

国士舘史研究年報第9号

建築調査からみえる国士舘大講堂の建築的特性65折衷させて新たな日本近代建築へと昇華したものであるといえよう。その用途は、建築時より教室として使用されるほか、様々な式典や講演会場として利用され、関東大震災の際は、被災者を広く受け入れたという記録も残っている。戦時中の空襲の際には、当時の教職員の必死の消火活動により焼失を免れた。その際、大怪我を負った教職員や生徒がいたとの記録も残っている。大講堂は、その後も国士舘大学世田谷キャンパスの中心的、象徴的な存在で、武道場、茶道場として、また大学のオープンキャンパス等の行事やサークル活動に使用されてきた。その内部はシンプルな大空間を保有しているため、様々な用途で使用することが可能であり、その懐の深さを表している。当初付属していた外便所が解体され、また屋根、内・外装など数度、改変の手が加えられているが、主屋の間取り、規模、構造、意匠形式は往時の姿をよく留めている。二〇一七年一〇月二七日には、国登録有形文化財(建造物)に登録された。講堂という分類における登録文化財としては都内で最古となり、また、和風意匠の講堂は全国的に類例が少なく貴重である。今後も、国士舘の建学の精神を象徴する建造物として、保存と活用を両立した「生きた文化財」であり続けることを願う。補足となるが、現地調査の際、どうしても理解できない痕跡が見られた。濡れ縁の束側面と貫上面が削れているのである【写真74・75】。昼休み時間に昼食をとり、大講堂へ戻ってきたところ、国士舘の学生が数人、濡れ縁に腰掛け、談笑している姿が見られた。腰掛けた状態で、ちょうど束と貫の位置に足が当写真 75 同右 (拡大) 写真 74 現状 濡れ縁 束・貫の削れ