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概要

国士舘史研究年報第9号

国士舘史研究年報2017 楓?644 Ⅳ 期:銅板葺き屋根等の改修 一九八二(昭和五七)年頃以降一九八一~一九八二年にかけて、銅板葺き屋根への改修を含む比較的大掛かりな改修が実施された。現在、我々が目にする大講堂の姿は、この改修後のものである。屋根は銀色の金属板葺きから銅板葺きへと改修し、その際、野地板、軒先廻りの茅負いや裏甲、破風、縋る破風等が取り替えられた可能性が高い。また、垂木軒先、破風、懸魚、向拝柱柱脚に銅板が巻かれた。銅製屋根樋も同時に刷新されている。外装は、正面の濡れ縁上の腰竪板張りが後補材へ取り替えられ、東西面の腰竪板張りは、モルタル塗り仕上げへ改修された。内法上の飛貫表し漆喰仕上げは、その上にボード下地を張って漆喰仕上げとし、これまでの飛貫表しの意匠ではなくなる。建具については、正面の主出入口と常用口の建具の意匠は以前のものを踏襲し、後補材へ取り替えられた。床については、断定はできないが後補部材の経年劣化の状況から、同時期に改修された可能性が高い。床組は補強のため、旧材を活かして劣化部を補修、取り替えた上で、補助的に後補材が挿入されている。床束石も同時期にコンクリート製のものへ取り替えられた。廊下の縁甲板並びに広間の捨て板(荒床)は構造用合板へ張替えられ、畳が敷かれた。この改修の際、工事に絡む廊下の腰竪板張り壁と、広間の内法下の松煙塗り額縁が廻る漆喰仕上げは後補材へ刷新され、内法下の松煙塗り額縁は撤去されている。また、廊下竿縁天井の天井板、講壇および床の間上の化粧合板目透かし張り天井の後補材への改修についても、部材経年劣化状況から、この時期の可能性が高い。おわりに大講堂は、一九一九(大正八)年、国士舘が現在の港区南青山から世田谷に移転してきた直後に建築された、国士舘の教育理念を象徴する「純乎たる日本式」(「国士舘上棟式記事」『大民』第四巻第八号、青年大民団、一九一九年八月)の外観をもつ建物である。一〇八畳の無柱の広間という大空間と日本風の寺院建築(本堂風)の意匠(建築様式)を具現化するため、小屋組構造の一部に洋風技術のクイーンポストトラス構造を採用している。また、屋根は天然スレート葺きを用いており、当時の最先端技術、材料を取り入れ、和洋の両技法を巧みに