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概要

国士舘史研究年報第9号

建築調査からみえる国士舘大講堂の建築的特性611 Ⅰ期:建築時(天然スレート葺き屋根) 一九一九(大正八)年以降建物は基壇上に建つ木造平屋建ての真壁造りで、主規模は現状同様、梁間八間、桁行一〇間、南正面に間口三間の向拝が付く。屋根は妻入りの反りのある入母屋造り屋根で、向拝部分を葺き下ろす。屋根葺き材は天然スレート葺きで、軒先に銅製の軒樋を廻す。外装は腰下を竪板張り、腰上を飛貫表しの漆喰仕上げとし、側柱の柱頭部に舟肘木を据える。入口は正面向拝と北東の常用口の二カ所である。正面向拝へは、基壇まで石段三段、さらに木階四段を上り、建物梁間の間口巾一杯に付く切れ目板張りの濡れ縁へ上がり大講堂内の廊下へ入る。常用口は木階四段を上がり、内部の廊下へ入る。間取りは、中央を一〇八畳(五四坪)敷きの広間とし、その南東西三方に幅一間の縁甲板張りの廊下を廻す。廊下は腰下を竪板張り、腰上は松煙塗装を施した額縁が廻る漆喰仕上げとする。広間は、廊下の腰上同様、松煙塗装を施した額縁が廻る漆喰仕上げである。天井は、廊下は竿縁天井、広間は折上格天井として天井を廊下より上げ、広間としての格式を高める。広間正面奥には幅三間、奥行一間、高さ一・五尺の畳敷きの講壇を設け、その奥にはさらに五・七寸上げて幅二間、奥行四尺の床の間を設える。講壇上の天井は無目落し掛け) (58 (を梁間に渡して広間の折り上げ天井を受け、一段下がった位置で鏡かがみ板いた天井) (50 (目透かし張りとする。床の間の天井も鏡板天井目透かし張りである。廊下の北東奥は、内法上の天袋部分が開放され、内法下は折れ戸を建て込んだ物置である。上の開放部は廊下の竿縁天井がそのまま伸びる。物置内部は、廊下同様腰下を竪板張り、腰上を松煙塗装額縁が廻る漆喰仕上げとし、内部に作り付けの木製棚を設ける。反対側の北西には、外便所(現存せず)が繋ぎ廊下を介して西側へ突き出した形で取り付く。その規模は確定できないが、図面、古写真等の資料より、繋ぎ廊下は巾一間、長さ一・五間、外便所は梁間一・二五間、桁行二間程度と推測される。現在物置となっている箇所は、建築当初は縁甲板張りの廊下で、突き当たりの繋ぎ廊下境に建具を建て込み便所と間仕切る。繋ぎ廊下、便所の内部仕様は不明であるが、古写真から外便所は主屋より屋根が低いこと、既存柱の床付近に残る痕跡から、繋ぎ廊下から先は木階等で数段下がっていると推定される。屋根は、外便所は寄棟造り、繋ぎ廊下は外便所屋根より一段低くした切妻造りで、天然スレート葺き、あるいは金属