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概要

国士舘史研究年報第9号

国士舘史研究年報2017 楓?38下に通した丸太で押さえる。つまり、丸桁上の束を支点、軒先先端を作用点、丸太で押さえた上端を力点とするテコの原理で軒先を吊り上げる。洋小屋組は、一般的に間口三〇尺(九m )以上の場合に用いられた小屋組構造で、大講堂では内部に柱を立てない広間の大空間(間口六間=三六尺=一〇・九m )を確保するために用いたと考えられる。軒先と棟廻りを和小屋組とした理由は、日本建築の外観意匠の特徴である深い軒の出と屋根反りをもたせるためと推定される。また、鼻母屋を敷桁より外側へ持ち出した理由は、軒の深さおよび棟の高さを確保し、かつ和風外観意匠として必要な屋根勾配を確保するためと推定される。例えば、鼻母屋を敷桁と同位置にすると軒先の屋根勾配が緩くなり、かつ屋根反りが大きくなりすぎてしまうなどの問題が生じ、それを解消するためには軒の深さを浅くするか、棟の高さを下げる必要がある。以上より、大講堂の小屋組は、必要に応じて適材適所で和洋の両技法を巧みに折衷させ、必要とされた機能(空間)、意匠を具現化させたことが分かる。なお、小屋組材は改変の手が加えられておらず、ほぼ全ての部材は建築時のものと推定される。⑤屋根軒廻りを化粧軒) 11 (納まりとする入母屋造り、流れ) 11 (向拝付き銅板葺き屋根とし、反りと軒のき反ぞりが付く。ア 軒廻り軒廻りは、三寸勾配の木き小ご舞まい付) 11 (き化粧垂たる木) 11ぎ(天てん井じょうとする。側柱上の舟肘木に丸桁が渡り、その上に一軒の化粧垂木が掛かる。丸桁および舟肘木の出で隅すみは) 11 (井い桁げたに) 11 (組む。化粧垂木は〇・二七寸×〇・二二寸(八〇×六五㎜ )、一枝(垂木設置間隔)一・五尺(四五五㎜ )で垂木巾七割(四五五/六五㎜ )の疎まばら割わりと) 11 (する。化粧垂木は小屋裏の桔木から化粧ボルトで吊られ、小口銅板を巻く。軒先は茅負の上に二に重じゅう裏うら甲ごうと) 11 (する。木小舞は〇・八寸×〇・九寸(二四×二七㎜ )で、六・五寸(一九七㎜ )間隔で割り付ける。化粧野の地じ板いたは) 1( (流れ方向) 11 (に張り、見え掛り) 11 (巾は約八寸(二四〇㎜ )である。隅すみ木ぎは) 11 (小口銅板巻きとする。なお、本調査では高所のため、隅木部材寸法、軒反り(一軒の割り出し)寸法は確認できなかった。イ 屋根屋根は、引渡し) 11 (七寸勾配の入母屋造り反り屋根とし、向拝の流れ屋根は引渡し四・五寸勾配とする。大屋根) 11 (と流れ屋根の取り合う箇所は縋すがる破は風ふで) 11 (見切る。野の垂だる木き() 11 (杉)は〇・九寸×〇・一五寸(二七×四五㎜ )