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概要

国士舘史研究年報第9号

国士舘史研究年報2017 楓?32現代の木造建築の構造の考え方と同じく、基礎と土台の緊結、土台と柱の抜け防止に配慮していたことが窺えるが、これらの構造的配慮が建築時のものか、関東大震災(一九二三年)後のものか現時点において確定はできない。イ 床組床組は足固め、大おお引びき、) 11 (根ね太だ掛がけ) 11 (、根太) 11 (で構成される。足固めは廊下と広間境の内部丸柱間に設置される。大引は、広間は桁行方向に三尺(九〇九㎜ )間隔で、廊下内は中央の長なが手て方) 11 (向に渡され、側柱、丸柱に桁行方向にとり付けられた根太掛けとともに根太を受ける【写真11】。広間、廊下ともに根太は一・五尺(四五五㎜ )間隔で配される。大引、足固めは三尺(九〇九㎜ )間隔で立つ床ゆか束づかに) 11 (支えられる【写真12】。床組は大きく改修されており、当初のものと思われる部材は、五寸(一五〇㎜ )角の足固めと、三・三寸(一〇〇㎜ )角の面皮付きの大引と直径三寸(九〇㎜ )の丸太束) 11 (である。大引上に渡される一〇八× 三〇㎜ の根太とその上の合板荒あら床ゆか() 11 (畳下の床板・厚さ一五㎜ )は、全て後補材へ更新されたものである。また、当初の大引の間には、三・三寸(一〇〇㎜ )角に製材された後補大引とそれを支える後補床束が補強のために設けられている【写真13】。ウ 軸部軸部は大きく広間の身も舎や空間) 1( (と廊下の廂ひさし空間) 11 (に分けられ、さらに南正面に向拝が付く。身舎空間を支える内部丸柱(入側柱、杉)は直径約九寸(二七二㎜ )で、切石礎石(独立基礎)上に石場建てで立つ。柱頭については、梁間方向は陸ろく梁ばり、) 11 (桁行方向は敷しき桁げたを) 11 (受けるが、柱長さが足りないため、柱頭と桁の間に調整用飼かい木ぎを) 11 (挟んで桁を受ける。陸梁は敷桁に掛かるため、下面で六寸(一八〇㎜ )の高低差が生じる。そのため飼木は桁行、梁間でそれぞれ成九・六寸、三・六寸×巾六・六寸×長さ二尺(二九〇、一一〇×二〇〇×六〇〇㎜ )と高さが異なるものが用いられている。飼木は敷桁と二本のボルトで固定される。なぜ、柱の長さが足りなかったのか現時点では不明であるが、柱の全長が一九尺(約五・七m )もあることから、当時の規格材料長さや運搬上の制限による可能性も考えられる【写真14】。廂空間の外部に立つ側柱( 杉) は五・三五寸( 約一六二㎜ )角で、面取り巾は柱巾の約一六分の一(約一〇㎜ )である。土台上に立ち、柱頭に舟肘木を据えて丸が桁ぎょうを) 11 (受ける。正面出入口の間口三間には差さし鴨がも居いが) 11 (掛り、その上に中なか備ぞなえ) 11 (として舟肘木とそれを受ける束を二本備える。側柱と土台の仕口は目視で確認できないが、