ブックタイトル国士舘史研究年報第9号

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概要

国士舘史研究年報第9号

国士舘史研究年報2017 楓?122イピッチで進んでいたのだが、五時間も経つと海は想像していた以上の手荒い歓迎を用意していたのである。私は海峡中央部を流れる千島海流にゆく手をはばまれ、流され始めたのだ。地元の漁師が「大潮」と呼んでいる時速一〇キロの強い北東流だ。話には聞いていたが、まるで激流だ) 7 (。縞模様の潮目に入ったとき、中島はみるみる湾の中心部に流されていったのだった。二〇年間も遊び育った親戚みたいな海だったが、このときは頑固な親父のように厳しく突き放してきたのである。なお、引用した中島の文章にある「千島海流」は、「津軽海流」の誤記である。日本海を北上してきた対馬海流は、津軽海峡の西口付近で流れを二分する。一方はそのまま北へ進んでいくのだが、大半は津軽海流となって東へと向きを変えて津軽海峡へ入り込んでいくのである。この流れが海峡の入口に殺到するので、日本海側の方が海面の高さが太平洋側より若干高くなる。それにより海水は太平洋側へ流れる傾向になっていく。これは傾斜流といって、海面に傾斜ができるとその高低差を均一にするために流れが生じるのである。通常の流速は一~三ノットで、冬季よりも夏季のほうが比較的強い流れとなっている(一ノットは、時速約一・八キロメートル)。ただこの流れは、時刻によって大きく変化してくる。潮の干満の影響である。津軽海峡をはさんで、潮位差の大きい太平洋の潮ちょう汐せきと、潮位差の少ない日本海の潮汐が大きく影響している。特に津軽海峡が四つの半島に囲まれていることによって、潮の流れはより複雑になっていく。東の太平洋側には本州側の下北半島と北海道側の亀田半島、一方の西の日本海側では津軽半島と松前半島が向かい合っている。この内海型の地形状況が、潮の干満や気象条件によって海流を西へと反転させるのである。それが東進してきた中島が卒業論文で作成した津軽海峡図(『卒業論文抄録集』国士舘大学体育学部、1969 年、85 頁)北 海 道函館竜飛岬津軽19.6㎞海峡青 森白神岬日 本 海太 平 洋渡 島 半 島津 軽 半 島