調査活動報告

テル・ジェサリー遺跡

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テル・ジェサリーはエスキ・モスール地域の上流の拠点ズンマル町の下流約15kmの地点にある。ティグリス河の河岸段丘上に形成された遺跡で、その規模は南北約200m、東西170m、高さ約10mである。1985年7月、11月、12月に発掘調査が実施された。遺跡の東側の崖部に発掘区を設け調査した結果、上層から順にイスラム時代、ヘレニズム時代、古バビロニア時代、アッカド時代、ウルク後期時代、ウバイド時代の生活層の堆積を確認した。

 

これらの生活層から発見された注目すべき遺構として、アッカド時代の調理場の跡とウルク後期時代の石積み遺構があげられる。調理場跡からは石敷き、臼石、小型土器、獣骨、貝、灰等や高さ約80cmの大甕が潰れた状態で出土した。これらの遺物は原位置を保った状態で出土しており、当時の一般の生活様式を知る上で貴重な資料である。石積み遺構は崖面で長さ約5mの範囲を検出した。ティグリス河に侵食され高さ1m、幅約50cmしか残存していないが、倒壊した石群から推測すると大規模な建造物であったと思われる。ティグリス河の氾濫原に面した崖に沿い自然堆積層を削り築いていることから、防御壁的な性格を持っていたと考えられる。ウルク後期時代の石積み遺構はあまり発見例がなく非常に珍しく特異な建築物である。

テル・ジェサリー、発掘したトレンチテル・ジェサリー、発掘したトレンチ
テル・ジェサリー遺跡、主要参考文献

沼本宏俊「テル・ジェサリー出土の遺物」『ラーフィダーン』第11巻(1990)、他に掲載。

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