調査活動報告

テル・デル・ハル遺跡

戻る

ティグリス河沿い、テル・ジガンの北西3kmのデル・ハル村にある小さなテルでは、6つの層を確認できた。テルの上の小さな家を含む現代の層の下に、紀元前2千年紀中頃の第2層の建物跡が発見され、暗色彩文帯の上に白色の幾何学文、動物文などが描かれたヌジ式土器などが出土した。さらにその下の第3層、4層では紀元前2千年紀のはじめ頃の特徴を持つハブール式土器が出土し、立派な石造りの建物も発見された。イラクの遺跡では彩文土器が多数発見され、その特徴がその遺跡や遺構の時期の決め手となる場合が多いのである。ハブール式土器は単純な帯状の彩文が特徴であり、北メソポタミアの古アッシリア時代の遺跡に分布する土器である。第5層から発見されたのは新石器時代、前5000年頃のハラフ式土器である。ハラフ式土器は、きめの細かい土器に2色、3色の色を使い、繊細な文様が描かれている。

 

この遺跡を特徴付けるのは、地山確認のために行った深掘りトレンチで発見された第6層かもしれない。1m近くの堆積の中から多数の石核、石器が発見されたのである。土器は発見されておらず、無土器新石器時代の層であることが、石器の総合的見地から判っている。これに相当する時期の遺跡は数が限られており、イラクの編年を作成する上で一石を投じる結果となった。

 

村の中にテルがあったため、村人に毎日お茶を誘われてご馳走になっていたが、雨上がりのその家の庭には古代の壁の跡がはっきり模様となってあらわれていた。人々は古代の人々が生活していた跡をきれいにして、上へ上へと建物を建てた事がよくわかる。

  • デル・ハル出土ハラフ期の土器デル・ハル出土ハラフ期の土器
  • デル・ハル出土の石器デル・ハル出土の石器
テル・デル・ハル遺跡、主要参考文献

大沼克彦、松本健「エスキ・モースル、テル・デル・ハル調査概報:第6層出土の石器」『ラーフィダーン』第9巻、他に掲載。

ページの先頭へ