私たちは日本人として、広く世界に目を向けながら、深く政治を掘りさげている。

 国士舘大学世田谷キャンパスのすぐ近くに、吉田松陰を祀った「松陰神社」がある。この神社の境内には、松陰が門下生を教えた「松下村塾」が再現されている。その前に立ち、ゼミの佐藤圭一先生は、私たちにこう教えてくれた。「吉田松陰は、ペリーの二度目の来航のとき、アメリカへの密航を企てて捕まり、投獄されている。日本の将来を考えるために、彼はどうしてもその目でアメリカの地を見たかったのだろう」。
 列強の支配に脅かされていた、幕末の日本に危機感を抱いた吉田松陰は、日本を救うために海外に目を向けた。弱冠24才のときである。国士舘大学(私塾国士舘)は、この吉田松陰の精神を範として、国家に役立つ人間を育成するために建学された大学だ。つまり、チャレンジに満ちた吉田松陰のこのスピリットこそ、私たちが政経学部政治学科で学び、吸収しようとしているものなのだ。


 佐藤ゼミで、私たちはアメリカの政治や文化を中心に学んでいる。しかし、ただ漠然とアメリカを学んでいるわけではない。あくまで日本人としての視点を持ちながら、日本と比較する対象として、アメリカを学んでいる。ゼミの学びがめざすのは、日本とアメリカの違い、さらにはそのベースにある文化や宗教の違いを理解することで視野を広げ、さまざまな角度から政治を考える力を養うことだ。ゼミの前半の授業で、私たちは先生から「アメリカの根底にある文化や宗教観」についてのレクチャーを受けた。
 先生の授業は、実に面白い。テレビや新聞などで知るアメリカとは違った、現地に行かなければ分からないディープな情報を教えてくれる。また、日本にいては気づかない日本のよさについても学ぶことができる。その内容は、まさに驚きと納得の連続なのだ。


 ゼミの後半、私たちは自分たちで選んだテーマについてレポートを書き、それを授業で発表する。レポートの作成は、資料集めからスタートする。先生に勧められた本やインターネットなどで情報を収集し、自分なりに分析し、考えて研究の成果をまとめていく。幸いにも、国士舘大学の図書館は、政治や文化などについての資料が充実している。またここには、「東京裁判」の記録や、アダム・スミス「国富論」初版本などの稀少本も揃っている。書架に並ぶ膨大な数の書物を眺めていると、“政経学部”から始まった国士舘大学の歴史の厚みをひしひしと感じることができる。その最先端で学ぶことができるのは、私たちの誇りでもあり、幸せでもある。
 ゼミでの発表は緊張するが、その後に設けられた質疑応答の時間が、自分にとってはいい経験になる。ゼミ生はもちろん、先生からもかなりつっこんだ質問が来るからだ。論点や自分の考えがあやふやだったり、調べが足りなかったりしたときは、答えに窮することもある。また、先生からは、ときに厳しいコメントをもらうこともあり、それが勉強になり、かつ、自分のためになる。


 政治は、国の骨格をなす大切なものだ。それを学ぶことは、日本を学ぶことであり、また広く世界へ目を向けることでもある。政治学科を出たからといって、皆が政治の道に進むわけではないが、ここで習得した知識と教養、広い視野、そして困難に打ち勝つ精神力は、どの分野に進んでも将来必ず役に立つだろう。弱冠24才でアメリカへ渡ることを志した吉田松陰の精神にならい、私たちはいつの日か、この学科での学びを活かして、社会という大海へと漕ぎだしていく。

政治学科3年 大塚 博勝 (埼玉県/県立桶川高等学校)
私は以前から臓器移植の問題に興味を持っていて、佐藤先生のゼミの研究テーマがアメリカの文化や宗教であることを知り、このゼミで学ぼうと思いました。例えば、日本ではなかなか進まない臓器移植ですが、その背景には、アメリカと日本の宗教の違いに根ざした死生観の差などもあるのではと思います。ゼミの発表にもこのテーマを取り上げ、脳死について研究しています。将来は公務員試験を受けて、公務員になり行政職につきたいと思っています。
経営学科3年 小山 真依 (東京都/都立第三商業高等学校)
親が店を営んでいる関係で、自分もいつかは経営者になりたいと思い、短大で経営を学んでいました。しかし、以前から政治にも興味があって、短大では憲法や民法が学べなかったので、3年から国士舘大学に編入しました。佐藤先生の授業は楽しくて、アメリカでの実体験にもとづく話など内容も面白く、とてもためになります。ゼミの発表では、妊娠中絶についての日米の考え方の違いについて研究しました。大学を出たら、一度は就職するつもりですが、ゆくゆくは起業することも考えています。
政治学科3年 佐藤 紘子 (新潟県/新潟青陵高等学校)
小学校1年のときから書道をやっていて、大学も書道が学べる短大に通っていました。でも、その頃から憲法に興味を持ち始め、法律や政治をいろいろ学べる国士舘大学の政経学部に編入しました。オープンキャンパスで佐藤先生と出会って、魅力を感じてこのゼミに入りました。先生の授業を受けて日米の比較に興味を持ち、ゼミの発表は先住民であるアメリカインディアンの人権問題をテーマに選びました。将来は新潟にUターンして、地元に元気を与えて活性化できるような仕事に就きたいと思っています。
政治学科3年 ニュエン・ヴィクトリア (ドイツ/ミュンヘン大学 海外協定校・交換留学生)
ドイツのミュンヘン大学から、交換留学生としてやってきました。高校生の頃から日本やアジアの国々に興味を持ち、ミュンヘン大学では、日本学、中国学、法律などを学んでいました。日本では政治学を学びたいと思い、希望を出したら、国士舘大学になりました。日本の授業はドイツの授業と違いますが、とても面白いと思います。また、日本語は美しく、日本の文化も面白いですね。将来は翻訳の仕事に就きたいと思っています。ゼミの友だちはみんなやさしくて、毎日がとても楽しいです。留学期間は1年ですが、もっと長く日本にいたいと思います。
政治学科3年 山本 沙織 (岡山県/岡山市立岡山後楽館高等学校)
短大で英語を学んでいたのですが、祖母と一緒に暮らしていることで、後期高齢者健康保険問題に興味を持ち、社会保障を学びたくなって国士舘大学に編入しました。ボランティアで遺骨収集の活動をずっと続けています。9月にモンゴルに行き、12月にはニューギニアに行きました。それでゼミの発表テーマも、佐藤先生の研究テーマでもある靖国問題を取りあげました。将来は一般企業に就職したいと思いますが、今後も何らかの形で遺骨収集の活動にたずさわっていきたいと思っています。
政治学科3年 渡辺 純也 (千葉県/千葉敬愛高等学校)
中学生の頃から政治のニュースに興味があって、政経学部の政治学科で学びたいと思い、国士舘大学を選びました。2年のときは違うゼミでしたが、3年でまた選びなおせるということで、佐藤先生の授業を見学しました。そのときの発表のテーマがオバマ大統領で、面白そうだなと思い、このゼミを選びました。ゼミの発表は、日本の政治家について研究しました。高校でいい先生に出会ったので、将来は教師にと思っていましたが、いまは父親がやっている公共事業のガス水道関係の仕事にも興味があります。
(学年は2009年12月時点 学年・名前50音順)